スイス犬聞録サースフェー編
2007年3月18ー25日

バーゼルからサースフェーへはCisalpinoというミラノ行きの特急電車で
ヴィスプまで行き、そこからポストバスに乗り換えていきます。
小さな犬(体高35センチ以下)はかばんに入っていれば無料。
大きな犬は子供料金(大人の半額)で乗ることができます。
朝6時半にバーゼルを出て3時間後の9時半にサースに到着しました。
環境を大切にするサースフェーの村内は車の乗り入れが禁止されています。
車で行く場合はサースフェーの手前にある大きな駐車場までは行けますが
そこからは電気タクシーかホテルのカートで村に向かうことになります。
サースフェーでは氷河と4000メートル級の山々を見渡しながらスキーを
楽しめます。上級者コースが充実しており少々高い崖から飛び降りても
アメリカのように高額な罰金を課せられることもありません。
サースフェーはいわゆる「強者スキーヤー」が集まる場所ですから
板をコントロールできないまま猛スピードで突っ込んでくる危ないボーダー
やスキーヤーを見かけません。子連れや犬連れの客にとっては安心です。
シャレーに着いたら、まずはハリーのトイレと運動に出ました。
サースフェーではシャレーに2食付きで泊まるのが一般的です。
1階に美味しいレストランがあるシャレーを選ぶと、
毎日の食事を選ぶ手間がはぶけます。
ハリーが家族とホテルに泊まる時はいつもエレベーターや階段から
一番遠い静かな角部屋をお願いしています。ハリーがひとりで留守
番するのに安心だからです。(参照:ホテルに犬を留守番させる
お腹を空っぽにしてボール遊びで満足したらスキーの準備開始!
ハリーの持ち物は写真左から、うんち袋(雪山でもうんちを拾います)、
綱(首輪が一緒になったもの)、ドライフード1日分(遭難したとき
のため)、使い捨てカイロ(リュックのポケットにいれておきます)、
タオル(途中で遊んだら濡れた足をふくため)。
カイロは気温が0度以下なら1つ、氷点下10度以下なら2つ。
気温が氷点下20度以下ならハリーはホテルでお留守番です。
到着した日は、気温氷点下19度、体感温度氷点下33度と
とんでもなく寒い日だったので、ホテルの人がサースフェー
よりも下にあるスキー場で滑ると良いと教えてくれました。
そこで、サースフェーの南、アルマゲルホルン(標高3327
メートル)を見渡せるサースアルマゲルに向かいました。
観光客がサースアルマゲルの存在を知らないからなのか
平日だったからなのか、天気が良いのに他に客は誰もいなくて
貸し切り状態でスキーを楽しむことができました。
ハリーはリュックサックに入ってスキーのお供をします。
リュックサックはアウトワードハウンド社の小型犬用のもので
トップとサイドの上半分がメッシュになっています。
底は硬めのクッションが入っているので安定しています。
最初はメッシュの間から外の景色を眺めていたハリーでしたが
しばらくして慣れてくると底に丸くなって寝てしまいました。
アウトワードハウンド社リュックサックの製品情報はこちら。
家を出る2日前の予報ではサースフェーでは毎日暖かい日が続く
と言っていたのに、直前で真冬の寒さに戻ると告げられ大慌て。
そこで出発前夜、ハリーの主人の古くなったフリースジャケットの
袖を切って、緊急にハリーの防寒着を用意。
とても簡単に作ることができたので、実物大の型紙と作り方を
簡単!手作りの犬用フリースジャケットに載せました。
サースアルマゲルの話に戻りましょう。
スキー場が貸し切り状態であるのをこれ幸いと、ハリーは
リュックから出て主人のスキーの後ろを走る練習をしました。
バーモントで雪山救助犬に最初に教えるのが「ハンドラーのスキーの
後ろを走ること」だったのを思い出して、同じように訓練しました。
「バックアウト」の命令で的確に後ろにまわれるようになったら、
ハリーはクロスカントリースキーに出かけられるようになります。
スキー場には他に誰もいなくて寂しいと思っていたら、
大きなロトワイラーが2匹、ご主人様のお供で
登山コースを歩いて山の上までやってきました。
スイスでは雪山に犬を連れて来る人は珍しくありません。
大きなホテルも小さなシャレーも大抵犬を受け入れてくれます。
ただし、車ではサースフェーの入口までしか行けないので、大きな
犬の場合は大量のえさを持ち込むのに苦労することがあります。
もちろん、フードの銘柄にこだわらないのであれば
村のスーパーでドッグフードを調達することができます。
ハリーは毎日のごはんを冷凍パックにして持っていきますが
いつもスキーと同じくらい重たくなってしまいます。
朝起きて、部屋の窓から明るい青い空が見えたら
大急ぎで朝ご飯を食べ、ハリーのトイレと運動を済ませます。
山の天気は変わりやすいので、晴天を無駄にはできません。
準備ができたらロープウェイ乗り場へ向かいます。
ロープウェイを2回乗り継ぎ、最後はケーブルカーでアラリンホルン
(標高4027メートル)の中腹のミッテルアラリンまで上がります。
ケーブルカーが頂上に近づく頃にはだいぶ空気も薄くなってきます。
ケーブルカーにはスキー客に混じって、冬山登山を楽しむ人や
ツアー観光客も乗ってきます。
ケーブルカーの終点にあるアラリン展望台からの眺め。
一面まぶしい銀世界。
この場所はすでに標高3500メートルです。
だいぶ空に近づいてきました。
ミッテルアラリンから氷河を少し滑り降りて小さなリフトで
氷河のさらに上の方までやってきました。
これより上に行きたい人は自分の足で歩くしかありません。
おバカと煙よろしく、ハリーの主人もせっせと登り始めましたが
空気は薄いし背中のハリーは重いしで息が切れてしまいます。
結局、途中で諦めて降りてきてしまいました。
美しいのは空の方向ばかりではありません。
ミッテルアラリンから見下ろす下界の風景も忘れてはいけません。
ロープウェイとケーブルカーを乗り継いで1時間近くかけて
登ってきた山も、上の写真のような風景を見ながら滑っていると
あっという間に麓に着いてしまいます。
とても寒かったので、途中のレストランで時々暖をとりました。
この時はハリーもリュックから出て、しばし足を伸ばしました。
でも、ひとりでいると他の人のスキーブーツに蹴られて痛い
思いをすることになるので、人間が食べている間は足下の
リュックにちょこんと座って待っていました。
人間も犬も体が温まったら、またひたすら滑り降ります。
だいぶ下界が近くに見えるようになってきました。
下の方にはジャンプやハーフパイプの設置されたスノーパークが
あります。ハーフパイプの高さは3メートル弱と低いのですが
壁がよく滑るのでスキーでも簡単に180度は空中回転できます。
村の近くまで下りてきたら、空気も充分暖かくなるので
人気のない所で、ハリーのトイレと運動を済ませます。
そしてハリーが満足したら、またロープウェイとケーブルカー
を乗り継いで山の上を目指します。
サースフェーの村は素朴な風景が広がり、サンモリッツや
ツェルマットのような商業的な空気はあまり感じられません。
小さな村なので、滑り疲れたら途中で部屋に戻って休み、
元気になったらすぐにスキーを再開することもできます。
スキーをしない人も、村や簡単な登山コースを歩いてみると
楽しい発見が沢山あるはずです。
写真はサースフェー独特のネズミ返しがついた高床式倉庫。
弥生時代に稲を保存した日本の高床式倉庫によく似ています。
またサースフェーのあるヴァリス地方には「なまはげ」そっく
りの鬼がいて、冬の寒さを人々のために追い払ってくれます。
サースフェーは何度訪れても感動できる所です。

あとがき:この記事を読んだ人の中には「自分も犬と一緒にスキーをしたい」と思った人がいるかもしれません。確かに、スイスのスキー場には多くの人が犬を連れてやってきます。しかし、雪山にやってくる犬の役目は大抵バックカントリースキーか登山のお供。小さな犬であればもっぱらホテルでの留守を預かるのが仕事です。犬を背負って氷河スキーを楽しむためには、絶対に事故を起こさないためのスキーの技術と雪山の知識が必要です。安易に真似をしてはいけません。

犬を連れて雪山に行くにはそれなりのお勉強をしてから。
この本は雪山での安全対策を楽しく教えてくれます。
言語は英語ですが、分かりやすいイラストが満載なので子供にも簡単に理解できます。
ハリーの主人は雪山へ向かう電車や飛行機の中ではいつもこの本を眺めながら
「大切なことを忘れてないか」チェックしています。
Allen & Mike's Really Cool Backcountry Ski Book:
Travelling & Camping Skills for a Winter Environment

Allen O'Bannon & Mike Clelland (1996)

(2007/4/8)

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