日本出入国時の犬の検疫制度
飛行機での輸送方法

ここでは主にアメリカとヨーロッパでの準備の手順を紹介していますが
他の地域に住んでいる飼い主さんも読んでみて下さい。
2004年夏から1年半に及ぶハリーの検疫準備の実録は日本犬聞録準備編にあります。
日本から犬と海外旅行に出かける計画をお持ちの方は犬連れの旅もご覧下さい。

コンテンツ
概要
狂犬病の抗体価測定
40日以上前の輸入届出
必要書類の準備
出発当日の犬の食事とトイレ
輸送方法
空港と飛行機内では
日本の空港に到着したら
日本からアメリカ、ヨーロッパへ出国
マイクロチップ
アメリカでのマイクロチップの現状
検疫制度に関するお問い合わせについて

概要
Vet 日本の動物検疫制度では以下の5項目を満たせば日本入国時の犬の係留が12時間以内となります。
  • マイクロチップ装着
  • マイクロチップ装着後、2回の狂犬病予防接種
  • 2回目の予防接種後、狂犬病の抗体価測定
  • 抗体価測定の採血後、輸出国での180日間待機
  • 輸入日40日前までに検疫所への輸入届出

狂犬病予防接種では不活性ワクチンを使用します。不活性ワクチンは英語で Killed Vaccine といいます。1年有効のものでも3年有効のものでも構いません。1回目の接種の有効免疫期限内(1年有効のワクチンであれば1年以内、3年有効のワクチンであれば3年以内)に30日以上の期間をおいて2回目を接種します。北米在住の飼主さんは必ず獣医にワクチンが不活性であることを確認する必要があります。EU諸国およびスイスでは不活性ワクチンしか認められていないのでこの点は安心です。

抗体価測定の採血後180日間の待機は、狂犬病洗浄国(イギリス、オーストラリア、スウェーデンなど日本政府が狂犬病が発生していないと認めた指定地域)で180日以上飼育された犬が日本に入国する場合と、日本で180日以上飼育された犬が海外旅行に出て再び入国する場合には必要ありません。ただし、抗体価測定の有効期限は採血後2年間なので、日本から出国した犬も海外での滞在が長くなる場合は、再度抗体価測定を行う必要があります。

注1:新制度施行を受け、短期間に2回以上の狂犬病予防接種をする犬も多いことと思います。過剰接種のために犬にしこりが出来ることがあります。柔らかく、皮膚と一緒につまめるものであれば、脂肪腫(Lipomas)と呼ばれる良性のしこりです。大抵1−2か月ほどで自然に消えてしまいます。しこりを見つけたら癌かもしれないとパニックにならず、まず様子を見てみましょう。但し、犬に元気がないようであればすぐに獣医に見てもらってください。(参考:Dog Owner's Home Veterinary Handbook 1992)

狂犬病の抗体価測定
Blood Sampling 血清採取は2回目の狂犬病予防接種と同日でも構いませんが、より確実な結果を得るためには2回目接種から21日以上経過してからが良いでしょう。大きな動物病院であれば、その場で遠心分離機で血清を作成し直接検査機関に送付してもらえます。遠心分離機が無い場合は、冷蔵庫で一晩保存すれば血清部分が上澄みとして自然分離します。血清は米国内ではカンザス州立大学または国防総省獣医食品分析診断研究所(テキサス州)、スイス国内ではベルン大学スイス狂犬病センターに送付します。その他の国の検査施設はこちら。

血清を送付してから結果が郵送されるまで通常2ー4週間かかります。獣医からは抗体価測定結果の原本を忘れずに受け取ってください。ちなみにカンザス州立大学で検査をした場合の原本は申請書の複写に『犬の名前、マイクロチップ番号、検査日、検査結果、検査官のサインが印刷されたシール』(写真参照)が下部空欄に貼付けられたものです。 Blood Sampling

注2:狂犬病抗体価検査の結果は2年間有効です。しかし、海外(狂犬病洗浄国を除く)に住んでいる場合、2回目以降の抗体価検査後も180日の待機期間が必要です。つまり、いつでも日本に帰れるようにしておくためには、1年半おきに抗体価測定をしなくてはなりません。PETS(イギリスの検疫制度)や北欧の制度では、抗体価測定で基準値を満たしていることが一度判明すれば、その後毎年予防接種を受けている限り2回目の抗体価検査をする必要がないため、アメリカやヨーロッパの獣医さんの中には「抗体価測定は1回で充分」と言う人もいるので気をつけて下さい。(2007/4/20)

40日以上前の輸入届出
Todokede 海外から日本に犬を連れて行く可能性がある人は、入国日が決まっていなくても早めに輸入届を検疫所に提出しておくのが良いでしょう。なぜなら入国日はあとで変更できるからです。我家の場合は、いつも1年以上先に入国予定と記して輸入届を検疫所に出してあります。こうしておけば、急に日本に行かなければならないという時に、入国日の変更届さえ送ればすぐに犬を連れて日本に行けます。もちろん検疫所には輸入届を出す時点で、記載されている入国予定日はあくまで予定であって変更する可能性があることを必ず告げています。

写真は動物の輸入に関する届出受理書(左)と狂犬病抗体価測定結果の原本(右)。

輸入届はオンラインでも受けつけていますがシステムに不備があり(日本国外の住所のフォーマットを認識できないようです)、うまく届かないことがよくあるので、急いでいるときはファックスで送るのが安全です。通常、2日以内に電子メールで受理書が送られてきます。

必要書類の準備

日本入国時に提出する書類は以下の4つです。

  • 動物の輸入に関する届出受理書(40日以上前の輸入届出の際にもらえる)
  • 狂犬病抗体価測定結果の原本(採血日から2年間有効)
  • フォームA
  • フォームC(ただし指定地域からの入国の場合はフォームBを使用)

農林水産省動物検疫所のサイトからフォームAとフォームCをダウンロードし印刷します。フォームAは自分で記入します。フォームCは獣医に記入してもらうことになっていますが、これも分かる範囲は自分で記入するのが良いでしょう。獣医に全ての記入を任せたばかりに、後で記載事項に誤りがあることが判明するというのは良く耳にする話です。記入したフォームCは、出国直前の検診の際にかかりつけの獣医に持参しサインしてもらいます。なお、検疫所サイトでは出国48時間前に検診を受けるようにと書いてありますが、無理な場合が多いので、あらかじめ検疫所に連絡しておけば10日前でも良いそうです

検診が終わったらフォームAとフォームCに政府の裏書き(獣医官のサインとスタンプ)をもらいます。ニューヨーク州では、州都のオーバニー(PPQ 1 Winners Circle, Suite 203 Albany, NY 12205)にあるUSDA-APHISで裏書きをもらいます。料金は76ドル。マンハッタン近郊であれば、JFK空港にUSDA-APHISの出張所があるので便利です。スイスでは毎年犬の登録をする州の動物管理局(Veterinäramt)で裏書きがもらえることになっていますが、現在(2007年12月)のところ州政府と連邦政府の対応が統一されていないため、「あらかじめ日本の動物検疫所で裏書きを取得する機関を確認する」のが安全です。スイスでもニューヨークでもオフィスに常に獣医官がいるわけでないので(よくお休みをしている)必ず電話で確認してから行きましょう。アメリカの他の州のUSDA-APHISの所在地はこちら。

また、イギリスやオーストラリア等の指定地域(狂犬病の発生していない国)から日本に入国する場合は、フォームCのかわりにフォームBを使います。作成手順はどちらも同じです。

注3:2005年6月、JFK空港ビルディング77にあったUSDA-APHIS出張所が移動しました。
Vet 新住所:230-59 Rockaway Blvd #101, Jamaica, NY11413
電話:1-718-553-1727
手数料も27ドルから76ドルへと大幅の値上げとなりました。
地下鉄駅やバス停からは遠いので車で行くことになります。車が無い場合はエアトレインでターミナル1まで行き、そこからタクシーで10分程です。
新しいオフィスは空港に隣接したビルの1階にあります。

出発当日の犬の食事とトイレ
Todokede 我家では10時間以上のフライト当日は、搭乗時間の6時間前になったら犬に一切食事も水も与えません。人間でさえトイレを我慢するより空腹や渇喉を我慢する方が楽なのですから、それは犬も同じだと考えてのことです。また、我家の犬は必ず機内に持ち込むため、お漏らしをしたときにかかる周囲への迷惑を考えてのことでもあります。これまで何度もアメリカ東海岸ー成田間、ヨーロッパー成田間を往復してきましたが、飛行機が到着した後、犬を空港の外に出すと20時間以上飲まず食わずの状態であるにもかかわらず関わらず、毎回大量のおしっこをします。もし、搭乗前に水をやっていたら、小さなキャリーの中で我慢に我慢を重ねた上、お漏らしをしてしまったに違いないと想像します。
犬(成犬)は、1週間くらい飲まず食わずでも生きていけると本で読みました(参照:Fogle, Bruce. The Dog's Mind. 1992)。実際、野生では毎日食事にありつけることの方がまれであるはず。もちろん飼い犬と野生動物を同じにすることには無理があるでしょうが、少なくとも我家の場合は犬にとっても人間にとっても搭乗前の食事と水の制限が理にかなっているのです。しかし、病弱な犬、幼犬、鼻の短い犬の中には、特に夏場、搭乗前の食事と水の制限をできない場合もあるでしょう。フライトが5−6時間と短い場合、普段から家で8時間以上排泄を我慢できる犬であれば食事と水の制限について特に気にすることはないでしょうが、長時間のフライトの場合は、犬の健康と周囲の乗客に配慮して準備する必要があります。

輸送方法
飛行機ではカーゴ輸送の場合、強化プラスチック製のケージを使用します。扉が金属製のものを選ぶと丈夫で安心です。PetMate社のVari Kennel(バリケン)であれば、大抵の航空会社で認められています。犬が立ち上がって向きを変えられる程度の大きさが良いでしょう。機内持ち込みのできるしつけのされた小型犬であれば、Sherpa社のDeluxe Carrierが軽くて丈夫なのでお勧めです。PetMate KennelとSherpa Carrierは、PETsMARTなどで安く購入できます。(アメリカ国外にも配送してくれるので、ペット用品店のない途上国にお住まいの方には便利です。) PETsMART

機内持ち込み可能な犬の重さは航空会社によって変わってきます。目安としては、北米系航空会社であればキャリーと合わせた重さでだいたい15ポンド(7キロ)まで。欧州系はもう少し厳しく5キロまでのところが多いです。2006年4月から全ての日系航空会社が犬の機内持ち込みを禁止にしました。これはマナーをわきまえない飼い主が機内に犬を持ち込み、他の乗客に迷惑をかけることが多々あったためと聞いています。とても残念なことです。世の中の全ての人が犬を好きなわけではありません。もし機内に犬を持ち込むのであれば、他の乗客に気づかれないよう注意を払うのが飼い主の最低限のマナーです。

注4:2006年9月からはユナイテッド航空ニューヨークー成田間が全て全日空との共同運航となったため機内に犬を持ち込めなくなりました。これでニューヨークー成田間の直行便で犬の機内持ち込みができる便がなくなりました。

北米から出発する場合、夏場のアジア方面行きの飛行機は貨物室に犬を受け入れない航空会社が殆どです。これは、気温が摂氏30度以上になると貨物室の温度管理が難しくなるためと言われています。貨物で犬を日本に輸送する場合は、真夏を避けて計画するのが良いでしょう。

空港と飛行機内では
Todokede 食事と水の制限をしてから搭乗に臨んでも、やはりフライト中の犬の排泄が気になるものです。我家では搭乗3時間前には空港についてチェックインを済ませ、あとは犬と外を歩き回ります。犬も飛行機に乗るとはどういうことかよく理解しているのか、最後の一滴まで絞り出すように一生懸命おっしこをします。そして飛行機に乗ったら、足下に置いたキャリーには一切触りません。飛行機の振動は犬を眠たくします。せっかく眠っている犬を起こしたら、犬の体が活動を始めて排泄を促してしまいます。

機内では犬は常にキャリーの中にいなくてはなりません。時々、犬好きのフライトアテンダントが「犬をキャリーから出してもよい」と言ってくれることがありますが、周囲への乗客のことを考えて犬を出すのは控えるべきです。なぜなら、通路の向こう側にいる人は犬が嫌いかもしれません。そしてその犬嫌いかもしれない乗客はよほどのことが無い限り、その場で文句を言うことはないでしょう。考えられるのは飛行機を降りた後にカスタマーサービスにクレームをいれることくらいです。そうなれば、犬の機内持ち込みが禁止になりかねないのです。また、どんなにお利口な犬であったとしても、機内という特別な状況下で100%お漏らしをしないという保証はありません。それが10時間以上のフライトであればなおさらのことです。

日本の空港に到着したら
Todokede 飛行機が到着したらまず旅券審査を通り荷物を受け取ります。犬をカーゴに預けた人は大型荷物の窓口で犬を受け取ります。荷物と犬がそろったところで「動物検疫窓口」へ向かいます。そこで「本日到着予定で届け出をした○○です。」と言うと係の人が既に用意された書類を持ってきて記載内容に間違いがないか確認し、間違いがなければ犬をケージごと預かって動物検疫所に直接運んでくれます。人間は荷物と一緒に税関を通ってから動物検疫所に向かいます。検疫所では簡単な犬の健康診断とマイクロチップの確認が行われます。検疫所のサイトには12時間以内の係留と書いてありますが、犬が健康で書類に不備がなければ10分ほどで終了します。

この時、犬を連れて再び日本を出国する予定のある人は出国届を済ませてしまうのが良いでしょう。出国届は40日以上前に提出する必要はないので、出国日が決まっていない人は届け出の用紙もらっていき、後日ファックスで送っても構いません。

検疫所内には人工芝を敷いた犬用のトイレが設置されており、長時間のフライトでトイレを我慢していた犬がまず排泄できるようになっています。トイレの横には移動途中で汚れてしまった犬を簡単に洗い流すシャワーもついています。

日本からアメリカ、ヨーロッパへ出国

日本を出国する時にもあらかじめ出国届を検疫所に出す必要があります。出国届は当日でも受けつけてくれますが書類を作成するのに長い時間待たされることになるので、最低でも1週間前に検疫所にファックスで送るのが良いでしょう。アメリカに入国するにはかかりつけの獣医が発行する狂犬病予防接種証明と健康証明が必要です。これらの証明書は日本語で構いません。この証明書をもとに検疫所が日本語と英語で書かれた出国検疫証明を作成します。
Todokede EU諸国に入国するには犬へのマイクロチップ装着と動物輸入証明(Veterinarian Certificate)が必要です。動物輸入証明の用紙は各国大使館のウェブサイトからダウンロードできます。動物輸入証明書には必要事項を自分で記入し、かかりつけの獣医にサインをもらいます。出国時、この用紙を日本の検疫所でも提出し、そこで獣医官のサインをもらい輸出検疫証明書のオリジナルに添付してもらいます。EU諸国では統一された動物輸入証明を使用しているので、一度犬を連れて入れば、4か月間は同じ証明書でEU諸国内を犬は自由に旅行できます。4か月を越える場合は、現地の獣医でEUペットパスポートを発行してもらう必要があります。写真はオランダの動物輸入証明(左)とかかりつけの獣医発行の健康証明(右)。

スイスやリヒテンシュタインのようにEUに属さないヨーロッパの国は独自の動物検疫証明の用紙を使用しています。これらの用紙も各国大使館のウェブサイトからダウンロードできます。書類作成の手順はEU諸国の場合と全く同じです。

また、短期間の海外旅行の場合も、犬が日本に帰って来るには40日以上前の犬の輸入届が必要です。帰国予定日の40日以上前に輸入届を出してから海外に出ましょう。

マイクロチップ
Microchip マイクロチップは長さ12ミリ、厚さ2ミリほどの筒状の生体適合ガラスに密封されたICチップのことです。動物の個体識別のために開発されました。マイクロチップには9桁から15桁の数字(商品によってはアルファベットと数字の組み合わせ)が前もって登録してあり、専用のリーダーをマイクロチップの上にかざすと、登録された数字が表示される仕組みになっています。

マイクロチップは注射器のような挿入器具で犬の肩の皮下に埋め込みます。施術に麻酔は必要なく、普段の予防接種のように数秒で終わります。ICチップを包む生体適合ガラスの表面には小さな凹凸があり、埋め込んだ場所から移動しないようデザインされています。10年程前まではガラスの表面が平らだったため、肩に埋め込んだはずのマイクロチップが数年後、膝の辺りまで下がっていたというケースがアメリカなどで報告されましたが、現在は心配ないようです。マイクロチップの寿命は約30年と言われています。ただし動物個体識別用マイクロチップが開発されてからまだ30年も経っていないため、これはあくまで予測の数字です。マイクロチップは非常に丈夫に作られており壊れることは稀なのだそうですが、マイクロチップの歴史自体がまだまだ浅いため改良の余地は充分にあると思われます。(2007/5/13 追記)

EU諸国では日本同様ISO規格の15桁のマイクロチップが普及しています。しかし、米国では異なる規格のマイクロチップが主流です。米国在住の犬の飼い主さんからの質問で最も多かったのが「ホームアゲインチップは日本の検疫所で読めますか?」というものでした。 HomeAgainは、日本の全ての検疫所で読むことができます。 日本の検疫所には、AVID社、Destron社(HomeAgain の製造業者)、Datamars社の3社リーダがあります。 その3社全てのリーダでHomeAgain は読み込めます。 私は実際にこの3社のリーダーを日本から取り寄せ、HomeAgain を読み取りました。

また、アメリカで現在99%以上のシェアを占めている以下3種のチップはISOであるかを問わず、 日本の検疫所にあるAVID社のリーダで読むことができます。

  • HomeAgain(10桁)
  • AVID FriendChip(9桁)
  • AVID EuroChip(10桁)
つまり、アメリカから犬を連れて帰る人は、まず間違いなく日本の検疫所でチップを読むことができるのです。しかも、そのチップがISOでなくても。それでも心配な人は、米国内でリーダを200ドル前後で買うことができます。

注5:ハリーの幼なじみのゆきはホームアゲインチップを埋め込んでいますが、2006年1月に帰国した際、成田の検疫所でチップの番号をちゃんと読み取れたと報告してくれました。

これは検疫所職員も公に言っていることですが、犬に装着されているマイクロチップはISOうんぬんであるより、それが検疫の際に読めることの方が大切なのです 。検疫所のリーダであれ自前のリーダであれ。政府が要求しているのは、あくまで個体識別なのですから。あとは、必要書類に不備が無ければ良いのです。

新制度で、ISOチップと記載されていたのには理由があります。世界には色々なチップが存在するので、全てを認めてしまうと、空港で読めなかった場合に責任を問われてしまうからです。ISO制定以前は、マイクロチップ製造業社各社はそれぞれ独自の仕様で桁数や周波数を決めていました。1994年以前に生産されたチップのいくつかががこれに当てはまります。途上国の獣医の中には、古いチップを未だに保管し使用していることがあります。古いチップの中には、確かに検疫所のリーダで読めない物があります。ただしAVID本社営業部によると、AVID社のマイクロチップであれば、例え90年代初頭に生産されたものであったとしても、検疫所にあるAVID社のリーダで読むことができるそうです。

アメリカにおけるマイクロチップの現状
Microchip アメリカで15桁のISO11784規格のチップが販売されない理由は、アメリカにおけるマイクロチップのマーケットシェアの現状にあります。アメリカのチップ市場は、現在AVIDとHomegainが独占している状態にあります。ここで、15桁のチップを認めてしまうと、ヨーロッパから大手(Datamars等)が参入してきてしまうためです。そこでAVID社とDestron社(HomeAgainの製造業者)は、15桁のチップをアメリカ国内で生産しているにも関わらず、その販売をアメリカで一切行わないのです。また、リーダもアメリカ国内用に15桁のチップを読めないものを生産し、それのみをアメリカ国内で販売しているのです。

また、特許の問題もあります。 マイクロチップの特許は、USとInternationalでは別々に登録されています。 同じ技術を使っているのですが、チップ製造の特許はアメリカではAVID社とDestron社(HomeAgainの製造業者)のみが取得しています。このため、欧州大手はアメリカでの特許を取得していないため、アメリカ国内でチップの販売をするのは面倒なのです。ちなみに、Datamars社は、2004年5月にアラバマに支社を設立し、アメリカで15桁のチップの販売を開始しようとしましたが、すぐにAVID社が訴えを起こしました。特許侵害だというのです。Datamars社はInternationalでは特許を取得しており、製造も欧州で行っているので、Datamars側の弁護団は、アメリカで販売することに何の違法性も無いと主張しました。しかし、裁判は現在も続いており、未だ15桁のチップの販売はおろか、Datamars社がアメリカの動物保護施設に既に寄付している15桁のチップを読み取るリーダさえも回収されかねない状況です。AVIDの訴訟に関する記事(英語)

ISOチップにはもともと桁数(15桁)とその数字に国番号や業者番号を決める11784しかありませんでした。しかし、マイクロチップを大量に生産しているアメリカのチップがISOに認められていないことに政治的な配慮があり、AVIDとHomeAgainのチップもISOと認めるため、周波数に関するISO11785 を新たに制定した経緯があります。ただし、11785規格を認めたことで、不都合が起こっていることも確かです。 ISO11784と11785に関する記事(英語)

(2004/10/28)

この記事は日本農林水産省動物検疫所、USDA-APHIS (Mr. Michael Wright), AVID (Ms. Catherine Wong), Destron Fearing (Ms. Jamie Gould), Datamars (Ms. Monica Emmenegger), 共立商会(侭田里美氏)、富士平工業(中村雄有氏)及び大日本製薬の取材協力にもとづいて書かれています。無断転載・引用は禁止いたします。

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