ニューヨーク犬聞録
2003−2006年

ハリーはマンハッタン島の西端、沢山の犬と大勢の学生、学者、作家、
芸術家等が住むちょっと個性的な近所に暮らしていました。
アパートは築110年のとても古い建物で、嵐が来る度に職人さんが
壁や屋根を直しにくるのが少々面倒でしたが、窓からはハドソン川や
ジョージワシントンブリッジ、リバーサイドチャーチが見えました。
本来はペットを飼ってはいけないアパートでしたが、ハリーの主人が
「家を壊したり周囲に迷惑をかけないようにしますから」と管理人
さんにお願いしてハリーを飼う許可をもらいました。(下記注参照)
アパートのすぐ目の前にはリバーサイドパークへの入口がありました。
トイレのしつけを全くされないまま成長してしまったハリーにとって
玄関を出ればすぐに排泄できる場所があるのはまさに願ったり叶ったり。
3時間おきにハリーを外に出さなくてはならなかったハリーの主人に
とってもこれは非常に有り難いことでした。
ニューヨークで犬を飼い始めたら市の衛生局に犬の登録をします。
申込書を送って1か月程するとピンクの丸いタグが送られてきます。
ハリーのような小さな犬にはちょっと大きすぎるタグですが
法律で装着が義務づけられているので仕方がありません。
首につけるタグがひとつで済むようにこのタグの裏側には
名前と電話番号も自分で印字しておきました。
ニューヨーク市の犬の登録はこちらから。
リーバーサイドパークに隣接してグラント将軍のお墓があります。
お墓の前の大きな広場でハリーは毎日服従訓練をしました。
モニュメントの入口にはアジリティのコンタクトの練習をするの
ぴったりの緩い傾斜の階段があったので、よくクリッカーと
ターゲットを持ってそこでコンタクトの練習もしました。
警備の兵隊さんはイスがあるだけの見張り小屋で退屈していたのか
ハリーが練習をしているといつも面白がって見にきてくれました。
グラント将軍のお墓での訓練を一通り終えたら
そのままリバーサイドパークを歩くのが日課でした。
天気の良い日にハドソン川沿いを歩くのはとても気持ちが
よいのですが、真冬は川からの風が凍るように冷たくて
ハリーでさえときどき歩くのを嫌がりました。
リバーサイドパークにはハトとリスが沢山住みついています。
最初ハリーはハトを見てもリスを見ても追いかけていましたが
ハトは自分の手の届かない空に飛んで逃げていってしまうので
すぐに追いかけるのをあきらめました。
しかし、リスは逃げるどころか犬をからかいに(?)
わざわざ木から下りてくるふりをするので
ハリーは最後までリスを見ては興奮していました。
短い散歩のときは72丁目のリバーサイドの桟橋まで歩いたら
同じ道をそのまま家まで引き返しました。
長い散歩のときはリバーサイドの桟橋から東に進んで
セントラルパークまで行きました。
公園の南口近くには美味しいお弁当を売っている日本食材店
があり、ハリーの主人はそこで「にぎり寿司スペシャル弁当」
(スペシャルは鶏の唐揚げ付き)とお茶を買って
公園の池の前のベンチに座って食べるのが楽しみでした。
ハリーのセントラルパークでの楽しみは池のカモを眺めること。
当時はまだ泳ぎがあまり上手ではなかったからでしょう。
リスやハトは追いかけたがるのに、カモだけは
いつも遠くから眺めているだけでした。
近所のカフェではテラスであれば犬を足下に置かせてもらえたので
ハリーも一緒にお茶を飲みにいきました。しかし、冬場は誰も外に
座らないのでテラスからイスとテーブルが消えてしまいます。
ニューヨークでは犬が飼い主とレストランに入店することは
できません。市の法律でそう決められているからです。
けれどもデパートやホテルは犬の入店を認めている所もあります。
犬はキャリーに入っていれば地下鉄とバスに乗車できます。
キャリーは犬の頭まですっぽりと入るものでなくてはなりません。
規則ではプラスチック製のケージに入っていれば大きな犬も乗車
できることになっていますがニューヨークの地下鉄はエレベータ
が設置されている駅が少ないのであまり見かけませんでした。
詳しくは 犬と公共の乗り物を利用する ニューヨーク編へ。
タイムズスクエアはいつも観光客で賑わっています。
ハリーが人ごみの中でも綱を引かずにまっすぐ歩く練習には
もってこいの場所でした。
いつもここから真っすぐイーストリバーへ向かって歩き
ブライアントパークを通って友達のゆきの家に遊びに行きました。
ニューヨークが便利だと感じるのは中華街へ買い物に出かける時。
ハリーのごはんの材料は全て中華街から調達されました。
肉と魚、野菜がとても新鮮で種類が豊富にあるからです。
値段も近所のスーパーの1/3と安いのが魅力的でした。
中国語しか通じない小さなお店でも買い物ができるよう
ハリーの主人は「すいません。それを1ポンド下さい」とだけ
中国語で言えるようになりました。
春は日本から輸入された桜があちこちで満開になりました。
写真はサクラパークのソメイヨシノ。
1912年、遠く日本から海をわたってきた木だそうです。
家から一番近くにある桜でした。
毎年きれいに咲いていました。
夏はサウナのように蒸し暑くなりました。
日が落ちても気温が下がらないところは日本の夏にそっくりです。
ひ弱な犬にならないためにハリーは真夏もいっぱい歩き回りました。
秋は近所のいちょう並木にぎんなんの実が落ちてきました。
この時期、嵐や大雨の翌朝は早くに起きて、清掃局の人たちが通り
の掃除をしてしまう前に大急ぎでぎんなんを拾いに行きました。
時々、中国人のおばあさんたちが大きな声でおしゃべりをしながら
楽しそうにぎんなんを拾いにきていることもありました。
冬はよく雪が降りました。
写真は雪の日のリバーサイドチャーチ。
朝起きて外が一面銀世界になっていると
ハリーは喜び勇んで公園に飛び出していきました。
ニューヨークには季節ごとに違った楽しみが沢山ありました。

ニューヨーク犬聞録はこれでおしまいですが、ニューヨークで起こった様々な日常の出来事については
「しっぽのおしゃべり」2006年2005年2004年2003年をご覧下さい。

(2007/1/3)

注:マンハッタンでペット可の手頃な賃貸物件を見つける(ハリーの家族の場合)

マンハッタンではペット可(Pets Allowed)と広告されている「手頃な」賃貸物件を見つけるのは容易ではありません。治安の悪い地区であれば、入居に厳しい条件をつけている物件はぐーんと少なくなります。しかし、マンハッタンは1980年代に比べ格段に安全になったとはいえ、いまだ命の保障はお金で買う社会ですから、海外生活に慣れていない日本人は犬を飼うためだけに治安の悪い場所に住むのは避けるべきです。では、どうすればよいのでしょう?

不動産屋さんの広告に自分の予算にあった物件が見つからなくても、大家さんや管理会社の担当者と直接会って交渉すれば条件付きで承諾してもらえることがあります。同じ建物の中にもペットOKの部屋とそうでない部屋があります。犬を飼えるかどうかを決めるのは建物の管理会社ではなく、部屋の持ち主(大家)であることが多いからです。ハリーの家族の場合は、既にそのアパートに長い間住んでおり、掃除のおばさんや設備のおじさんととても仲良くしていたので、まずは現場のスタッフ全員に「犬を飼いたい」という旨を相談し味方につけてから、管理人さんに話を持っていきました。特に敷金を上乗せしたりすることもなくハリーを飼う許可がもらえました。

マンハッタン島にこだわらなければ、川の対岸にあるニュージャージー州やクイーンズ地区には多くのペット可のアパートがあります。犬を飼えるアパートが見つからないからと言って、くれぐれも内緒で飼いはじめたりしてはいけません。トラブルが起きた時に多額の賠償金を請求されることになります。

(2007/2/15)

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