スイス犬聞録 ファスナハト編
2007年2月26−28日

バズラー・ファスナハト (Basler Fasnacht)
バズラー・ファスナハトはスイス最大のカーニバル(謝肉祭)です。
14世紀に始まったといわれる伝統あるお祭りで、
本来はレント(下記注参照)に入る前の3日間、
断食に備えてたらふく食べてお祭り騒ぎをするのが目的でした。
その後、16世紀の宗教改革でプロテスタントとなったバーゼルでは
ファスナハトの宗教色は薄れ「冬の終わりを祝うお祭り」となりました。
プロテスタントの人々がカーニバルを祝うのは非常に珍しいことです。
現在のファスナハトは灰の水曜日(下記注参照)の後の月曜日から
3日間行われています。
ブラゲッデ (Blaggedde)
ファスナハトの1か月前になると街中の人たちがブラゲッデと呼ばれる
写真のような金属のバッジを左胸につけて歩くようになります。
ブラゲッデのデザインは毎年変わり、色は4種類あります。
銅が8フラン、銀が15フラン、金が45フラン。そして、ビジュ
(宝飾)と呼ばれる銀に金メッキで模様をつけたものが100フラン。
このブラゲッデの売上金がファスナハトの運営資金となります。
写真は2007年のブラゲッデ。
モルゲンシュトライヒ (Morgenstraich)
月曜日(ファスナハト初日)の早朝4時。辺りはまだ真っ暗の中、
ミュンスターの鐘の音を合図に一斉に音楽が鳴り始めます。
同時にバーゼル中心部の全ての家から明かりが消えます。
街灯も消されます。観客はカメラのフラッシュをたいてはいけません。
真っ暗の中をパレードの明かりだけがゆっくりと進んでいくのです。
この早朝の行事をモルゲンシュトライヒと呼びます。
メールズッペ、ツヴィーベルヴェヘ、ケーゼヴェヘ
(Mehlsuppe, Zwiebelwähe, Käsewähe)

これから木曜日の朝4時までバーゼル中に音楽が響き渡ります。
音楽を演奏しながら行進する人も沿道でそれを見る人もまずは
腹ごしらえが必要です。モルゲンシュトライヒの帰り道では通りで
売られているメールズッペ(玉ねぎと小麦粉のスープ)とツヴィー
ベルヴェヘ(玉ねぎパイ)かケーゼヴェヘ(チーズパイ)を食べます。
どれも決して美味しいとは言えない代物ですが、14世紀の人たちが
同じ物を食べていたのであろうと想像してみるのは楽しいものです。
クリーク (Clique)
モルゲンシュトライヒの後、家に帰ってひと眠り。
早めのお昼ごはんを食べたら、早速パレードを見に行きました。
初日はあいにくの雨でしたが、大勢の観客が集まっていました。
まず、目に飛び込んできたのは真っ白いプードルのクリーク。
クリークとは笛と太鼓で伝統的な音楽を演奏するグループのこと。
どのグループも工夫を凝らした衣装で行進します。
グッゲ (Gugge)
グッゲとはブラスバンドの音楽隊のこと。
ポップやロックの曲をファスナハト風にアレンジして演奏します。
グッゲはモルゲンシュトライヒには出てきません。
グッゲはクリークのように古い伝統はありませんが、衣装が派手で
音楽も耳慣れたものが多いので、グッゲのおかげでファスナハトが
いっそう華やかになります。
ヴァッギス (Waggis)
バーゼルのファスナハトの主人公は、つきあがった大きな鼻に
ボサボサ頭、飛び出た大きな歯が特徴のヴァッギスです。
ヴァーゲ (Waage)と呼ばれるトラックに乗ってやってきます。
その昔、冬が終わるとフランスのアルザス地方からバーゼルまで
農作物を売りにくる農民たちがいました。ヴァッギスはその農民
の象徴なのだそうです。
レップリ (Räppli)
ヴァッギスはヴァーゲの上からお菓子、オレンジ、バナナ、
ゆで卵、ミモザやバラの花、おもちゃなどを投げてくれます。
でも時々、レップリと呼ばれる紙吹雪を投げつけて観客に
いたずらしたりもします。ハリーの後ろに写っている人は、
ヴァーゲまでミモザの花束をもらいにいったら、腕をつかまれ
レップリを頭からどっさりかけられてしまいました。
春の訪れを告げるもの
ヴァッギスは冬の終わりにやってきます。
そして、春の訪れを告げる物を置いていってくれます。
写真はハリーの主人がヴァッギスからもらったもの。
黄色いひよこ(にわとり?)は、親切なヴァッギスが
"Firs Hundeli!"(スイスのドイツ語で「わんちゃんに!」)
と言って、ハリーにくれたおもちゃです。
スジェ (Sujet)
ファスナハトのパレードは音楽と仮装だけが目的ではありません。
それぞれの音楽隊は、前の年に起きた出来事をもとに
スジェとよばれる社会に訴えたい意見をかかげて行進しています。
「アメリカの戦争反対」といった政治的な意見から
「学校にブランド品の服を着せてこないように」という
小学生の親たちの意見まで様々なものがあり、音楽隊と一緒に
進むカンバス製のランターンに意見の趣旨が絵に描かれています。
写真のランターンは「喫煙が健康に及ぼす害」を訴えています。
案内係さん
どの音楽隊も必ず通るのがミュンスターの広場。
ここには大勢の観光客がつめかけるので案内係さんがいます。
ミュンスターの入口で兵隊の格好で立っていました。
休み時間、衣装を脱いだ案内係さんはお面にそっくりの
まんまるほっぺに口ひげのちょっと太ったおじさんでした。
あの重たいお面は必要なかったかも・・・
子供のファスナハト (Kinderfasnacht)
火曜日は子供のためのファスナハトがあります。
この日、子供たちはアメリカのハロウィーンのような衣装を
身にまとってパレードに参加します。ヴァッギスの他、
お姫様、騎士、動物の着ぐるみが人気の仮装のようです。
ハリーもてんとう虫の衣装で行ってきました。
子供たちはパレードで大はしゃぎ。
フロートに乗っているのも子供、沿道の観客も子供。
子供はヴァッギスと違って、お菓子や果物よりもレップリ
ばかりを投げたがります。
道はあっという間にレップリで埋め尽くされました。
ハリーもレップリまみれになりそうだったので、
この日は早めに退散したのでした。
夜のパレード
月曜日の朝4時から3日3晩パレードは続きます。
真夜中に街の中心に出ると、ショーウィンドウだけが明るく光る
閉店したデパートの前を音楽隊が練り歩いていました。
いつもなら夕方6時を過ぎると店は閉まって街は静かになるのに
ファスナハトの間だけは夜中も街に人が溢れているのが
ちょっと不思議な感じです。
最終日
曜日が水曜から木曜に変わった真夜中に、今年のファスナハトの
最後を見届けようと夜の散歩に出かけました。
まだまだ元気にパレードを続けているグループ、
脇に寄ってビールを飲みながらひと休みをしているグループ、
それを面白そうに見ている観光客が大勢いました。
バーゼルの街の中に暮らすハリーとハリーの家族は、この
3日間、昼も夜もパレードの音と共に過ごしました。
寝る時はうるさいなあと思っていた音楽もファスナハトが
終わりに近づくと不思議と名残惜しくなりました。
来年のファスナハトが今から楽しみです。

(2007/4/4)

注:レント(四旬節)とは、イースター(復活祭)前にキリストの受難を思いながら、肉や卵、乳製品などを断って祈りを捧げる46日間のことです。レントが始まる日を灰の水曜日といます。通常、キリスト教のカレンダーでは灰の水曜日の前(レントに入る前)の3日間がカーニバルとなっています。しかし、バーゼルでだけは灰の水曜日の後(レントに入った後)の月曜日からの3日間がカーニバルです。バーゼルが1週間遅れでカーニバルを行うようになったのは16世紀の宗教改革でプロテスタントとなったことと関係があるようですが、それを証明する歴史的文献が残っていないため、はっきりとした理由は分かっていません。

(2007/4/6)

ハリーの地球犬聞録目次へ

おしゃべりなしっぽホーム
Copyright © 2003-2007 Talking Tails. All Rights Reserved.