各国アジリティ事情
スイス(ヨーロッパ)、アメリカ、日本国内の競技会徹底比較
スイス(ヨーロッパ)
ニューヨークからバーゼルに移り住んできた今、ハリーはスイスでアジリティ競技を楽しんでいます。スイスではスイスケンネルクラブがアジリティ競技を推進する唯一の団体です。スイスケンネルクラブの会員になれば、お隣のフランスやオーストリアのアジリティ競技会にも参加できます。その反対も可で、スイスのアジリティ大会でも外国からの選手を見かけます。ただし、世界大会の選考会には外国のケンネルクラブの選手は参加できません。
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スイスケンネルクラブのアジリティ部門に入会するには、まずケンネルクラブに加盟する地域のアジリティクラブに所属します。スイスは九州ほどの大きさのとても小さな国ですが、全国に約120のアジリティクラブがあります。ハリーの所属するクラブの年会費は120フラン(12000円)で週2回行われるトレーニングは無料です。入会金はありません。トレーナーはクラブの上級者が務めます。トレーナーにお給料は支払われませんが、クラブが全額出資して著名なトレーナーの訓練に毎週通うことができ、そこで習ってきたことを他のメンバーに教えるという方法をとっています。クラブの運営は会員からの年会費と年1回行われるクラブ主催のアジリティ競技会からの収入で成立っています。写真はクラブの会員証。
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自分の所属するアジリティクラブを通してスイスケンネルクラブへ犬を登録し、写真のようなライセンス手帳が送られてきたらアジリティ競技会に出場できるようになります。この手順は、犬が純血種でも雑種でも全く同じです。スイスケンネルクラブのアジリティ部門の概要は以下のとおり。
入会金:40フラン(4000円)
年会費:55フラン(5500円)
出場料:1種目10ー14フラン(1000−1400円)
必須の訓練試験:無し
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レベルは1度(初級)から3度(上級)まであり、それぞれのクラスのAGで減点無しでトップ20%に3回入ると進級できます。ただし、ハリーはIFCS世界大会やUSDAA、IMCAで良い成績を残していたのが認められ、最初から3度に入ることができました。このあたりの判断は非常に柔軟なようです。体高別クラスは、ラージ、ミディアム、スモールの3つ。競技種目はAG(スタンダード・アジリティ)とJP(ジャンピング)と Spiel(大会を主催するクラブが工夫して行うゲーム。大抵はAGに似たコースを走りますが、ギャンブラーであることも。)があります。ただし、ライセンス手帳に記録が残るのはAGのみです。
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毎年秋にはAgility Schweizer Meisterschaft für Vereineと呼ばれるクラブ対抗チームアジリティ全国大会があります。クラブを代表する3匹または4匹の犬がチームを組み、AG、JP、Stafette(ひとつのリングにギャンブラー、AG、JPの3種類のコースを設置し、最初の犬が決められたタイム内で点数を稼ぐギャンブラーを走り、その犬がフィニッシュラインを越えると同時に次の犬がAGを走り、またその犬がフィニッシュラインを越えると同時に最後の犬がJPを走るリレー競技)の3種目の合計点数を競います。夏の間に開催される予選を勝ち抜いたチームだけが秋のファイナルに出場できます。写真(クリックでビデオに)は2007年大会の表彰式でスイスの国家が流れているところ。(2007/11/5)
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スイスは多言語国家なので、ジャッジはドイツ語とフランス語の両方でブリーフィングをします。イタリア語やロマンシュ語(イタリア語に近い言語)圏の人もいますが、彼らは大抵フランス語を理解するので、イタリア語やロマンシュ語でブリーフィングをするジャッジにはまだお目にかかったことがありません。ただひとり、ブリーフィングの最後に「みんな分かった?イタリア語では説明する必要はないね?」とだけイタリア語で言ったジャッジはいましたが...
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スイスの競技会で面白いのは、3位までの入賞者に送られるトロフィーです。競技会を主催するクラブがそれぞれ工夫して、独自のトロフィーを作ります。各クラブに大抵ひとりくらい陶芸や工芸を趣味にしているメンバーがいるのか、手作りのトロフィーであることが多いです。トロフィーとはいっても、フードボウルだったり、マグカップだったり、ロウソクたてだったりと実用的な物が目立ちます。犬をモチーフにしたデザインが多いので増えすぎてしまって置く場所に困っても、それを欲しがる友人が必ず見つかります。写真はバーゼルの競技会もらったトロフィー。スイスのトロフィーをもっと見たい人は スイスのアジリティ大会のトロフィーへ。
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ハリーのスイスケンネルクラブのライセンス手帳には「FCIアジリティ・ワールド・チャンピオンシップ(世界大会)にだけは参加できない」と書かれたシールが表紙の裏に貼ってあります。つまり、それ以外のアジリティ大会には雑種のハリーも全て参加できるというわけです。ヨーロッパにはFCI公認のヨーロピアン・オープンと呼ばれる国際アジリティ大会があります。ヨーロッパのケンネルクラブでは雑種もアジリティ競技に参加しているため、純血種に限定しないオープンクラスが2002年に開設されました。参加犬はFCI世界大会に出場する純血種に加え、雑種犬の数も年々増えています。2006年現在、アメリカとアジアのケンネルクラブから参加者がいないためヨーロピアン・オープンという名称になっていますが、将来的にはワールド・オープンとなることが望まれています。なお、ハリーがスイス代表として参加した2007年ヨーロピアン・オープンの報告はこちら。
スイスケンネルクラブのアジリティ競技会では、通常ラージクラスの10−15%、ミディアムクラスの25−30%、スモールクラスの15−20%が雑種です。ヨーロッパの全てのケンネルクラブが雑種のアジリティ競技会参加を認めているわけではありませんが、雑種を排除するケンネルクラブが少ないのはハリーにとっては嬉しい限りです。
(2007/2/10)
アメリカ
アメリカではアジリティは非常に人気のあるスポーツです。マンハッタンのような土地の高い場所にアジリティ施設は全くありませんが、一歩郊外に出ればアジリティを練習する場所が沢山あります。アメリカには3つの大きなアジリティ団体があります。AKC(アメリカンケンネルクラブ)、USDAA(USドッグアジリティ協会)、そしてNADAC(北米ドッグアジリティ機構)です。AKC、USDAA、NADACの入会金や競技会への出場料に大きな差はありません。この3団体は友好的な関係を保っており、役員やジャッジが2つ以上の団体を兼任しているケースも珍しくありません。
AKC以外の競技会には雑種犬も参加できます。純血種の犬は上級になればなるほどAKCとUSDAAの両方の競技会に出場することが多いようです。1日の競技会で出場できる種目が、AKCではAGとJPの2種目しかないところ、USDAAでは3種目から6種目もあるので、世界大会を狙っている純血種の多くはまずAKCの競技会でその年の全国大会への出場権を獲得してしまうと、USDAAにばかり参加するようになる傾向があります。NADACは、AKCやUSDAAよりも小規模ですが、勝敗を気にせず気楽にアジリティを試したい人が集まる競技会です。ここではハリーが生後18か月からスイスに引越すまでの1年半のあいだ参加してきたUSDAAの競技会について詳しく説明します。
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USDAAの競技会に参加するには生後12か月以降に犬をUSDAAに登録する必要があります。実際に競技に参加できるのは生後18か月以降。写真は会員証。生後36か月以降に認定ジャッジに体高を測定してもらうと発行されます。それ以前はテンポラリーカードと呼ばれる青い紙切れのみ。
入会金:18ドル(2000円)
年会費:無し(つまり、初年度に18ドル払えばあとは無料ということ)
出場料:1種目12ドル前後(1300円)
ただし、トーナメント種目は20ドル(2200円)
必須の訓練試験:無し
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ジャンプバーの高さは体高別に決められ、30センチ、40センチ、55センチ、65センチの4クラス。競技はスタンダード(オプデスのAGにテーブルを加えたもの)、ジャンパー(オプデスのJPからスラロームを除いたもの)、ギャンブラー(遠隔操作を競う)、スヌーカー(抑止と解放操作を競う)、リレー(2匹の犬がチームを組む)の5種目のほか、毎年11月に開催される全国大会(USDAA世界大会)への出場権を競うグランプリとスティープルチェイスの2つのトーナメント種目、合計7種目あります。また、3匹の犬がチームを組み5種目の合計点を競うダムティームと呼ばれる競技もあります。
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スティープルチェイスでは参加者全員の出場料から10%を各体高別クラスの1位に、5%を2位に、3%を3位に、そして1%を4位に競技会の終わりに配分することになっています。もらえる金額は参加人数によって変わってきますが、1位になると大抵100ドル近く(11000円)の現金がもらえるので、その週末の参加費と遠征のためのガソリン代くらいが戻ってくることになります。鼻の前に現金をちらつかされると、選手たちの目つきががぜん真剣になります。
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4位までに入賞するとロゼッタがもらえます。色は1位が青、2位が赤、3位が黄色、4位が白です。また、クリーンラン(減点0)で走るとQ(クオリファイド)となり、えんじ色のQリボンももらえます。レベルはスターター(1度)、アドバンスト(2度)、マスター(3度)があり、それぞれの種目で3回Qとなると次のレベルに進級できます。ただし、その3回のQは別々のジャッジによるコースでなくてはなりません。また、そのジャッジが自分の親族だったり先生である場合は、成績表に記録が残っても進級のためのQとはカウントされません。公平さを守るために厳しい規則があるのです。進級するたびに特別大きなロゼッタがもらえます。写真でハリーが首につけているロゼッタは、Master Agility Dog - 通称MADのタイトルロゼッタです。
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そして、いつもちょっと忘れた頃にUSDAA本部から写真のようなタイトル獲得証明書も郵送されてきました。厚手の紙に金の刻印がある立派なものです。額に入れて飾る人も少なくありません。
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USDAAは「マニアック・アジリティ」とよく呼ばれています。遠隔操作を競うギャンブラーや抑止と解放操作を競うスヌーカーのように、犬の訓練度を試される競技があるからです。ギャンブラーやスヌーカーは、ハンドラーのスキルに差がなくなってきた時、犬の足が速さだけでは勝敗の決まらないところが大変面白いです。足の遅い犬や年寄りの犬も、訓練度が高ければこの2つの競技では入賞する可能性があります。また、犬種(バセットハウンドやセントバーナードのような犬種を想像してください)や年齢(犬と人間両方)によっては、狭い場所で高く飛んだり速く走ることが困難な場合があるので、USDAAではパフォーマンスクラスと呼ばれる通常よりも低いジャンプを飛ぶクラスも設置されています。このように様々な犬と人のニーズに応えた競技を提供しているところがが、USDAAの「マニアックさ」をさらに強調していると言えます。
(2007/2/10)
日本
2006年1−2月、その年5月のIFCSアジリティ世界大会への出場権を得るために、オプデスが主催する日本代表チーム選考会に参加してきました。当初ハリーはアメリカ代表としてIFCSに参加する予定でしたが、2005年の終わりにアメリカ国籍のハンドラーしかアメリカ代表チームに入れないことがUSDAAで決まり、急遽日本の選考会へ飛び入り参加することになったというわけです。その時、日本のアジリティ愛好家から日本のアジリティの様子について詳しく話を聞くことができ大変勉強になりました。日本では、主に「ジャパンケンネルクラブ(以下JKC)」、「オプデス」、「草アジ」という3つのアジリティ団体があり、JKC以外の競技会には雑種犬も参加できます。丁度、アメリカのAKCがJKCに、USDAAがオプデスに、NADACが草アジに当たると考えれば、北米在住者の人には分かりやすいかもしれません。ここでは日本の友人たちからの情報をもとにJKCの競技会と、ハリーの出場したオプデスの競技会について説明します。
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JKCのアジリティ競技会に参加するには、犬はJKCに登録された純血種でなくてはなりません。JKCのアジリティの概要は以下のとおり。
入会金:2000円
年会費:4000円
出場料:7000ー10000円
必須の訓練試験:無し
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JKCの競技会はオプデスや草アジのものより規模が大きく、開催頻度(日本全国で年30回程)も多くなっています。JKCに加盟するクラブは全国に1070(含ドッグショークラブ)あり、会員数は15万人。内、アジリティ競技会に出場している会員は約1000人と言われています。オプデスがUSDAA規定を採用しているところ、JKCはFCI規定で競技を行っています。競技種目はAG(スタンダード・アジリティ)とJP(ジャンピング)があります。雑種はアトラクションとよばれる枠で初級レベルのコースを走る機会が与えられていますが、競技枠である1度、2度、3度には出場できません。
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オプデスの競技会に参加するにはまずオプデスに入会する必要があります。入会すると写真のような競技会記録ノートがもらえます。
入会金:無し
年会費:5000円
出場料:1種目4000ー6000円
必須の訓練試験:受験料4000円、登録料1000円、有効期限1年。
訓練試験はチームテストと呼ばれレベル1と2があり、6か月以上1年以内の期間にレベル2に2回合格すると永久資格となります。
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ジャンプバーの高さは体高別に決められ、30センチ、40センチ、55センチ、65センチの4クラス。競技はAG(スタンダード・アジリティ)とJP(ジャンピング)の2種目があります。スティープルチェイスも行われていましたが、USDAAのスティープルチェイスのように上位4席に参加料の合計金額を順位別に配当する現金賞金があるわけではないので、AGからシーソーとドッグウオークがなくなったものと考えれば良いでしょう。オプデスはUSDAAに加盟するアジリティ団体ですが、2006年の時点ではギャンブラー、スヌーカー、リレーのゲーム3種目はまだ設けられていませんでした。
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レベルはビギナーから始まり、ノービス、1度、2度、3度と上がっていきます。3度の犬は2度にも、2度の犬は1度の競技にも参加できます。AGにテーブルがない他は、どのレベルのコースもUSDAAのコースに非常に良く似ていて、FCI式のコースより障害物間の距離が長く、スピードを出しやすい設定になっています。3度のレベルは高く、世界に通用するハンドラーが日本で大勢育っている印象を受けました。
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3位以内に入賞すると表彰台の上でメダルが授与されます。1位が金、2位が銀、3位が銅メダルです。ハリーはメダルの他に、ベストアジリティ賞のトロフィーももらいました。毎回、3度のAGかJPかのどちらかで1位になった犬がもらえる賞だとのことです。この時、ニューヨークから遥々東京まで飛んでいった甲斐あって、ハリーは2006年IFCS世界大会の日本代表に選ばれました。
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(2007/2/10)
各国のアジリティ団体
http://www.tkamo.ch:SKG-TKAMO(スイスケンネルクラブ)
http://www.usdaa.com:USDAA(USドッグアジリティ協会)
http://www.akc.org:AKC(アメリカンケンネルクラブ)
http://www.nadac.com:NADAC(北米ドッグアジリティ機構)
http://www.opdes.jp:オプデス
http://www.jkc.or.jp:ジャパンケンネルクラブ
http://www.kusaagi.com:草アジ
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