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犬を飼い始めたら、しつけをする必要があります。しつけは訓練とは違います。訓練は犬に様々なスキルを教えることですが、しつけは犬が人と仲良く生活するためのマナーを教えることです。世の中の全ての人が犬を好きなわけではありません。犬の嫌いな人が道で犬に飛びつかれたら、真夜中に犬が吠えているのを聞いたら、いったいどう思うことでしょう。特にニューヨークのような大都市では多種多様な人が密集して住んでいるため、行儀の悪い犬が引き起こす近所トラブルをよく耳にします。全米の犬の4匹に1匹が満2歳になる前に保護施設に送られてしまうという中、飼い主が早めにしつけをしておけば犬が安楽死させられないですんだケースも多々あるのです。
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アメリカンケンネルクラブ(AKC)のグッドシチズンテストは、犬が人間社会の一員として受け入れられるために必要なしつけの到達度を審査するものです。要求されるのは「最低限のマナー」なので、決して難しいテストではありません。AKCのテストですが、狂犬病予防接種証明と畜犬登録証(ドッグライセンス)さえあれば、全ての犬(雑種、未去勢、未避妊の犬を含む)が受験できます。
ハリーもグッドシチズンテストに合格しました。テスト当日は、いつも使っているブラシ(クシも可)と狂犬病予防接種証明、NYCドッグライセンスを持って行きました。受験料は主催団体によって変わってきますが、通常10−20ドル位です。ハリーの時は12ドルでした(2004年6月)。その他に合格すると5ドルの登録料(任意)がかかります。登録はしなくても良いのですが、登録すると立派な証書がAKCから送られてきます。
テストでは以下の10項目全てをパスしなくてはなりません。
グッドシチズンテスト10項目
見知らぬ人が近づいて来ても落ち着いている。
見知らぬ好意的な人が飼い主に近づいて来ても、犬は落ち着いてその様子を見守らなくてはなりません。ハンドラーは犬を横に座らせた状態で立っています。そこへ試験官が犬を無視しながら近づいて来て、ハンドラーと挨拶を交わし握手します。この時、犬は座っている状態を崩したり、怯えたり、試験官に飛びついたりしてはいけません。ハリーはニコニコ近づいてくる試験官が気になってしょうがないようだったので、少し厳しい口調で「待て」の命令を出した後、左手で「待て」のハンドシグナルを出し続けました。
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見知らぬ人が触ってきても落ち着いている。
見知らぬ好意的な人が手を差し出しても、犬はおとなしく撫でられなくてはなりません。試験官はハンドラーと握手をした後、「犬を触ってもいいですか?」("May I pet your dog?")と聞いてから座っている犬に手を差し出し優しく体や頭を撫で始めます。この間、ハンドラーは犬に話かけつづけても構いません。また、犬は座っている状態から立ち上がっても構いませんが、興奮して試験官に飛びついたり、吠えたり、怯えて逃げ出そうとしてはいけません。試験官が手を差し出すと同時に「待て」を解除すると、ハリーはゆっくり立ち上がって試験官の足にすりよっていきました。
清潔な身なりと健康。
犬の身なりと健康状態が審査されます。まず試験官は犬が通常使用しているブラシまたはクシで毛をとかし、歯、耳、手足など体の隅々まで触ってチェックします。この時、犬はおとなしくされるがままにいなくてはなりません。ハリーは上機嫌でブラッシングされ、歯や耳をチェックされているときにいたっては、目をつぶって夢心地という様子で周囲の笑いを誘っていました。これは普段から体中を触ってもらっている犬には簡単な項目です。
リードを引かずに歩く。
犬はハンドラーの左右どちらかについて、リードを引かずに歩きます。この時、犬はハンドラーの真横についている必要はありませんし、ハンドラーが止まっても即座に座る必要もありません。試験コースには、左折、右折、Uターンがあり、途中停止をする箇所もあります。歩いている間、ハンドラーは犬に命令したり褒めたりと話しかけ続けても構いませんが、決して叫んだり怒鳴ったりしてはいけません。
雑踏の中でも行儀よく歩く。
犬は多くの人が行き交う場所でも、リードを引かず行儀よく歩かなくてはなりません。試験コースでは、数人の歩行者とすれ違うようになっています。この時、犬は歩行者に多少の興味を示しても構いませんが、黙ってハンドラーについて歩き続けます。リードを引ぱって歩行者に飛びつこうとしたり、怯えて立ち止まったりしてはいけません。
Sit(座れ)、Down(伏せ)、Stay(待て)が出来る。
犬はハンドラーの命令で座れ、伏せ、待てをします。この時、犬が一度で従わなければ、命令を繰り返しても構いません。ハンドラーは犬に待てをかけたら6メートル(20フィート)ほど離れて行きます。犬は座っていても、伏せていても構いません。30秒ほどすると試験官の合図でハンドラーは犬の所に戻ります。
呼ばれたらすぐに来る。
犬は呼ばれたら、一目散にハンドラーの所へ来なくてはなりません。ハンドラーは犬に待てをかけ、今度は3メートル(10フィート)ほど離れたら、振り返って犬を呼びます。この時、ハンドラーはずっと犬に呼びかけ続けたり、手を叩いたり口笛を吹いて誘い続けて構いません。
見知らぬ犬にも行儀よく接する。
犬は他の犬が近くにいても落ち着いていなくてはなりません。試験コースを2人のハンドラーがそれぞれの犬を連れて歩きます。お互いに向き合った状態で6メートル(20フィート)ほど離れた所から歩き始め、すれ違いざまに挨拶を交わし、握手をし、また挨拶を交わして、さらにもう3メートル(10フィート)ほど歩き続けます。この時、犬は他の犬に多少の興味を示しても構いませんが、決して相手の犬の方に近づこうとしては行けません。ハリーにとっては、この項目が一番難しいものでした。普段から他の犬を見ると挨拶をしたくてしょうがない犬だからです。そこで私が相手のハンドラーと挨拶をして握手をしている間も、空いている左手で「待て」のハンドシグナルをハリーに出し続けていました。
騒音などの障害の中でも落ち着いている。
犬はハンドラーについて歩いている間、ちょっとした騒音に怯えたりせず自信をもって歩き続けなくてはなりません。試験官は2種類の騒音を伴う障害を犬の近くで起こします。ハリーが受験したときは、ステンレス製の椅子がガシャーンと倒れてきたあと、しばらくして今度は松葉杖をついた人が目の前で転んで倒れ込んできました。この時、犬は多少の興味を示したり、驚いた様子を見せても構いませんが、パニックになって逃げようとしたり、吠えたり、威嚇したりしてはいけません。ハリーはステンレス製の椅子は無視して歩き続け、松葉杖をついて転んだ人には近寄って、心配そうに顔を覗き込んでいました。
飼い主が目の前からいなくなっても落ち着いている。
試験官は「あなたの犬を見ていてあげましょうか?」("Would you like me to watch your dog?")と言って、ハンドラーから犬を預かります。ハンドラーは「お願いします」("Yes, please. Thank you.")と言って、その場から3分程立ち去ります。この時、「待て」と言って立ち去ってはいけません。犬はハンドラーが立ち去って行く時、多少心配そうな素振りをしても構いませんが、ずっと泣き続けたり、吠え続けたり、ウロウロ怯えて歩き回ったりしてはいけません。ハンドラーのいない間、試験官は優しく犬に話かけつづけ、撫でたりしています。ハリーは、私が立ち去る時だけ鼻でキューンと小さく泣きましたが、目の前から消えてしまえばすぐに諦めて、試験官におとなしく撫でられていました。
試験当日
試験会場に着いたらまず受付を済まし受験者の列に並びます。この時、気をつけて観察したいのは自分の前後に並んだ犬の様子です。そわそわ落ち着きがなかったりしつけの悪い犬の場合は、トイレにでも行くような素振りをして並び直しましょう。なぜなら、見知らぬ犬への反応のテストはこの前後に並ぶ犬とすることになるからです。普段はどんなにお利口でも、相手の犬が興奮して吠えてきたり飛びかかってきたら、テストに失敗してしまうことがあります。
試験中はえさやおもちゃを携帯することを禁止しています。そこで多くの人がチーズやレバーの匂いを手にべったりなすりつけていました。服従訓練には自信があったものの、ハリーの主人も万が一のことを想定して試験直前までローストビーフを左手に握りしめていました。また、ハリーの興奮を押さえるために試験前30分間は思いっきりボールで遊ばせて疲れさせておきました。普段はお利口な犬も試験場という異空間では上手く動けなくなることがあります。ましてはハンドラーが緊張していれば、犬は興奮して当然です。試験前に犬を落ち着かせる工夫が合否を大きく左右するようです。
ハリーが受験した時の試験官は、いつも笑顔で穏やかに話す上品そうなおばあちゃまでした。ハリーは1歳になったばかりでしつけも決して完璧な状態ではなかったのですが、試験官との相性が良かったことが功を奏して、いつになくお利口に試験に臨んでくれました。この試験官は審査が終わるとすぐに採点用紙を持って来て、「おめでとう!ハリーは本当に愛らしい犬ね。」("Harry is such a sweet dog. Congratulations!)と声をかけてくれました。そして採点用紙のコメント欄にも、「素晴らしく愛らしい犬!」("Wonderful sweet dog!")と書いてくれました。
AKCグッドシチズンテストの公式サイト:American Kennel Club Canine Good Citizen Program.
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