スイス犬聞録 移住編
2006年夏

住み慣れたニューヨークを離れスイスのバーゼルに越してきました。
バーゼルはフランスとドイツの国境沿いにあるスイスの街です。
今回のフライトはスイス航空チューリッヒ行きを利用。
スイス航空では離発着時だけ頭上の棚にキャリーごとしまっておけば
足下に収納スペースのない席にも小さな犬と一緒に乗ることができます。
ハリーの家族はハリーが暗い棚の中で手荷物に囲まれて不安にならないか
心配しましたが、ハリーは水平飛行になるまでお利口に待っていました。
最初の3か月間はアパートメントホテルで暮らします。
有名なバーゼルの見本市が開催されるメッセのお隣。
北へ1キロ歩けばドイツ、西に2キロでフランスです。
ここに滞在しながら新しい家を見つけるのです。
バーゼルは物価(特に食料品の価格)がとても高いのに驚きましたが
住居費だけはニューヨークのマンハッタンより幾分安いようです。
(その後すぐに新しい家を見つけたのですが、内装工事が長引いて
結局4か月間もここに滞在することになってしまいました。)
ハリーは新しい部屋の中で落ち着ける場所を探しまわっていましたが
3日も経てば涼しい所を見つけてはそこで寝そべるようになりました。
コンシェルジェさんは犬が大好きでハリーを見るたびに
「サーリ、ルンピ!(Saali Lumpi!)」と言って体中を撫で回してくれます。
サーリは「こんにちは」で、ルンピはスイスでよくある犬の名前です。
スイスでは犬の名前が分からなければ「ルンピ」と呼んでいればいいのです。
スイスのドイツ語は標準ドイツ語と発音も単語もだいぶ違って面白いです。
メイドさんたちはポルトガル人なのでうまく言葉が通じません。
けれども彼女たちが部屋に来るたびにハリーが熱烈な歓迎をしたおかげで
すぐに打ち解けることができました。
スイスに引越してきたら2週間以内に州(Kanton)に犬の登録をします。
さっそくハリーも近所の犬管理局(Hundekontrolle)で登録を済ませました。
バーゼル州の犬税は1匹あたり毎年165フラン。
(1スイスフラン=約95円。犬税の額は州によって異なります。)
犬の登録をするとバーゼル州の紋章が入った五角形のタグがもらえます。
ちなみにこの犬管理局はバーゼル州の検疫所の役割もはたしているので
今度日本に行くときはここで検疫書類に裏書きをしてもらえるそうです。
獣医さんで狂犬病予防接種をするとペットパスポートがもらえます。
このペットパスがあればEU加盟国とスイスの間を犬は自由に旅行できます。
しかしスイスでは耳やしっぽを切られた犬の持ち込みが禁止されています。
(旅行者や新たな居住者の場合は例外的に認められることがあります。)
ハリーのしっぽはとても短いので、これまでも家族の間で何度となく
「ハリーのしっぽは切られたのだろうか?」という話題がのぼりましたが
ここにきてとうとう管理局の獣医さんの診断を受けることになりました。
その結果、「うーん、雑種だしよく分からないなあ」とのこと...
国境は目と鼻の先でこれから頻繁に外国へ出かけることになるのに
その度に検問でビクビクハラハラするのもいやなので
念のためにペットパスポートの「耳と尾」の欄に
「尾は切られているかもしれないがスイスへの入国を認める」
という裏書きを前出の犬管理局でもらうことに。裏書料30フラン。
スイスではボクサーもオージーも長いしっぽをふりふりしています。
ドーベルマンは耳を切られていないと垂れ耳で愛嬌のある顔になります。
(耳の端を切られたドーベルマンは悪魔の角のように尖った立ち耳)
耳やしっぽは犬にとって大切なコミュニケーションツールです。
それに耳やしっぽを切られて痛くないわけがありません。
これはとても良い法律です。
ライン川沿いにあるバーゼル市内は中世の面影が色濃く残っています。
街の中心部には古い教会がいくつもあります。
歴史的建物は慎重な補修工事を重ねてきれいに保存されています。
外装は古くても中は近代的なインテリアになっていることもあります。
車のとおりが多い道はもちろんアスファルトですが
古くからある狭い路地などは石畳なのも嬉しいです。
街のあちらこちらにこのような噴水があります。
飲料水なので暑い日には水筒に水を補充している人をよく見かけます。
新しい噴水の土台部分には犬用の水飲み場もついています。
古い噴水には犬用のかわりに馬用の水飲み場がついています。
夕方のライン川。
暑い日には大勢の人がライン川で泳ぎます。
泳ぐというよりは浮輪をつけて下流に流されるのを楽しんでいるようです。
300メートル位流されたら岸に上がって上流まで歩いて戻ります。
後ろに見える大きな橋の上から川に飛び込む人たちもいます。
バーゼル流バンジージャンプです。
夜9時頃、ライン川で泳ぐハリー。
しっぽを小刻みに振りながら真剣に泳いでいます。
スイスの夏は涼しいと思われがちですが
バーゼルの夏はニューヨークと同様、猛暑となります。
幸い夏の夜は9時過ぎまで明るいので犬も人間も夕方に活動できます。
夜の水泳がハリーの夏の日課となりました。
住宅街にはライン川の小さな支流が運河のように流れています。
その小川にかかっている橋がどれも違うデザインでおしゃれです。
近年、ライン川に大量のサケやマスの稚魚を放流しているそうです。
この橋の上からもニジマスのような魚が泳いでいるのが見えました。
バーゼルでアジリティクラブに入りました。
訓練所は森に囲まれた美しい場所にあります。
きれいな空気をいっぱい吸いながらアジリティができますが
天気が良すぎて日差しがとても強いので夏場は帽子が必要です。
冬は寒くても屋外で練習しつづけます。クラブの会長さん曰く、
「アジリティはアウトドアスポーツなんだから雨が降ろうと、
風が吹こうと関係ありません。犬もそれに慣れなくては!」
ハリーの主人も全くもって同感です。
トラムの駅から訓練所までは森の中のハイキングコースを通ります。
1キロほどの距離ですが
歩いていてとても楽しいのであっという間に着いてしまいます。
多くの人が犬を連れて歩いています。
犬たちは綱を着けていませんがよく躾けられているので安心です。
馬とも時々すれ違います。
森のハイキングコースには小川が流れています。
泳ぐには浅すぎますが、犬たちが遊ぶにはちょうど良い深さです。
ハリーは小川と遊歩道を行ったり来たりしながら森を歩きます。
森にはダニがいるので家に帰ったらハリーの体中をチェックします。
蚊もいますがスイスにはフェラリアがないので怖くありません。
森にも街中にも住宅地にもこのような緑の箱をよく見かけます。
これは犬のうんちを捨てるためのゴミ箱です。
箱の両脇には扉があってうんち袋が引き出せるようになっています。
スイスは酪農国なので犬の排泄物から媒介される病気に敏感です。
それでみんな犬のうんちの後始末をちゃんとするのです。
ハリーのスイス犬聞録はまだまだ続きます。お楽しみに!

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